『ミラル』 Miral

ユーロスペースにて公開中の『ミラル』を観ました。
『潜水服は蝶の夢を見る』『バスキア』『夜になるまえに』のジュリアン・シュナーベル監督作品。
ルーナ・ジブリール(ニューヨーク在住のパレスチナ人ジャーナリスト)の半自伝的小説『ミラル』が原作。
『スラムドッグ$ミリオネア』のフリーダ・ピントがミラル役。眼力すごし。

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1948年、イスラエル建国に伴う戦火の中、親兄弟を殺された多くの子どもたちに出合ったヒンドゥは、私財を注ぎ込んで、「ダール・エッティフル(子どもの家)」を設立する。その後も親を失った子どもたちは増え続けた。その中に母を失った少女ミラルがいた。1987年、17歳になったミラルはイスラエル軍の暴虐を目にし、パレスチナ人の蜂起に参加するが、それはヒンドゥの望む事ではなかった。
ミラル – goo 映画


“ミラル”は道端に咲く赤い花。きっと誰もが目にしたことがあるはず

始まりのテロップで表示され、作中でもミラルが口にする場面があります。
「パレスチナ問題、メディアで目にしていても結局他人事しか見ていないでしょ」と個人的に言われているようなショックを受けたな…。政治的背景をよく理解していないままに観ていいのかどうか、劇場に足を運ぶのに若干躊躇いがありました。けれどそんな躊躇いは遥か彼方へー。
「中東には、空想の入り込む余地はありません。この目で見たものを語る以外、できないのです」と原作者が語るように、選択肢のない、第三者によって強いられた人生。
4人の女性の視点からそれぞれの人生に焦点をあてて描かれているので、彼女たちの感情が痛いくらいに伝わってきたし、紛争中な背景があるのにも関わらず絵画的な映像美に魅了され、本当に見てよかったと思える一本でした(勿論理解困難な事象は多々あるし、見ていて辛くなるシーンもあったけれども)。

個人的にグッときたポイント
・縦に静かに揺れる鉄製パイプ。ナディア(ミラルの母)の悲劇的な登場シーン。
・ポランスキーの『反撥』が上映される映画館のシーン、「ドヌーヴ様が狂気の沙汰に⇒普通の看護婦が凶悪犯罪に手を染める」と、心理描写が重なって緊張感高まる。
・ミラルの父親が、ナディアの死後にミラルをダール・エッティフルに入れるのだけど、理由が「難民キャンプに送らずに教育の機会を与えるため」、というのも直接的にはわからない。
・ヒンドゥを乗せた車に花が投げられる、自由・平和への希望と祈りがこめられたラストシーン。

潜水服は蝶の夢を見る [Blu-ray]

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ルー・リード/ベルリン [DVD]

バスキア [DVD]

フリーダ・ピントちゃんの名演技も去ることながら、ヒンドゥを一人で演じたヒアム・アッバスに乾杯。
ウィレム・デフォーも出てるよ。

多くの人に観て欲しい一本ですが、平日のユーロスペース、ガラガラでした…